【歌詞ひらがな付き】卯の花の匂う垣根に、って香りじゃないの?「夏は来ぬ」解説と歌唱アドバイス

作品を知る

「初夏に歌える日本の歌ってなにかなぁ?」「みんなが知ってる日本の歌が知りたい!」「♪卯の花の~って聴いたことあるけどタイトルなんだっけ?」

この記事では唱歌「夏は来ぬ」を紹介します。子供の頃に歌ったことがあったり、CMでも耳にすることのあるこの曲…どんな内容を歌っているか知っていますか?

音楽のレクリエーション、うたごえ、ミニコンサートなど年齢を問わず楽しめる曲なのでぜひあなたのレパートリーに加えてください!

作詞者 佐佐木信綱

作詞者は佐佐木信綱(ささきのぶつな)です。1872年~1963年(明治5年~昭和38年)を生きた日本の歌人、国文学者です。生まれは三重県鈴鹿郡(現在の三重県鈴鹿市)。「万葉集」の研究で有名です。国文学者としての著書は数多く、校歌の作詞も多数おこなっています。

作曲者 小山作之助

作曲者は小山作之助(こやまさくのすけ)です。1864年~1927年(文久3年~昭和2年)を生きた日本の教育者、作曲家です。生まれは越後国頸城郡(現在の新潟県上越市)。日本音楽教育協会初代会長を務めました。唱歌、童謡、軍歌、校歌と多岐にわたり生涯1000曲以上を作曲したといわれています。

歌詞(ふりがな付き)

歌詞を見ていきましょう。見慣れない言葉があってもふりがな付きで安心です!ぜひこちらで読み方を確認してくださいね。

はなの にお垣根かきね
時鳥ほととぎす はやもきなきて
忍音しのびねもらす なつ

五月雨さみだれの そそぐ山田やまだ
早乙女さおとめが 裳裾もすそぬらして
玉苗たまなえううる なつなつ

たちばなの かおるのきばの
窓近まどちかく ほたるとびかい
おこたりいさむる なつ

おうちちる 川辺かわべ宿やど
門遠かどとおく 水鶏声くいなこえして
夕月ゆうづきすずしき なつ

五月さつきやみ ほたるとびかい
水鶏くいななき はなさきて
早苗さなえうえわたす なつ

「夏は来ぬ」 作詞:佐佐木信綱 作曲:小山作之助

単語の意味

歌詞に出てくる単語の意味を紹介します。

  • 卯の花…ウツギの花の別称。日本では5~6月に開花する白い花。
  • 匂う…美しく咲いている。美しく映える。(視覚の美しさを表す古語)
  • 時鳥…夏の訪れを告げる代表的な渡り鳥で、5月頃やってきて秋に南へ去る。見た目はカッコウと似ている。
  • 早もきなきて…早くもやってきて鳴いている。
  • 忍び音…時鳥の声をひそめるような鳴き声。旧暦の4月頃の最初の鳴き声。
  • 五月雨…旧暦5月頃に降り続く長雨。梅雨。
  • 早乙女…田植えをする若い女性。
  • 裳裾…衣服の裾。
  • 玉苗…田植えに用いる苗の若苗。早苗と同じ意味。
  • ううる…「植える」の文語系。
  • 橘…ミカン科の常緑小高木。葉と花に香りがあり6月頃白い花が咲く。
  • 諫むる…「いさめる」の文語系。忠告する。
  • 楝…センダンの古名。初夏に薄紫色の花をつけ、秋に黄色の丸い実を結ぶ。
  • 水鶏…水辺に住むクイナ科の渡り鳥。ヒクイナ。
  • 夕月…夕方の空に見える月。
  • 五月やみ…五月雨が降る頃の夜の暗さ。五月闇。旧暦の5月頃。

歌詞の解釈と現代語訳

ここからは私の見解を交えながら現代語訳、歌詞を解釈していきます。

ウツギの花が美しく咲いている垣根に
ホトトギスが早くもやってきて鳴いている
控えめな鳴き声がきこえる 夏が来た

長い雨が降り注ぐ山間の田んぼでは
田植えをする若い女性が衣服の裾を濡らしている
若苗を植えている 夏が来た

橘がかおっている軒先の
窓の近くでは蛍がとびかっている
なまけてはいけないと忠告する 夏が来た

センダンの散る川近くの家の
出入口の遠くでヒクイナの声がきこえる
夕方の空に見える月が涼しい 夏が来た

五月の暗い夜 蛍がとびかって
ヒクイナの鳴き声がきこえて ウツギが咲いて
田植えをしている 夏が来た

花の名前や田植えの様子、鳥や蛍の登場から、今の季節でいう5月初旬~6月中旬くらいの初夏の風景を歌っているのかなぁ…と想像できますね。

1番から4番までは初夏の季節がうつろう様子を歌い、5番では総まとめしています。連の終わりはすべて「夏は来ぬ」(夏が来た)と結んでいるのが印象に残る曲です。

歌う時のポイント

まずは歌詞を読もう!音読と意味調べ

まず歌詞を音読しましょう!日本語の曲ですが時代が古いとイマイチわからない言葉や、言葉は今と同じでも違った意味で使われていることがよくありますよね…口に出して読んでみて読みにくいものはふりがなを書いたり、意味を調べることで歌う時に自信を持って歌うことができますよ!

真ん中の自分、意識して息をコントロール

この曲のメロディの大きな特徴は、上下に跳躍する音程が多い(音が隣へ進まず飛んでいる)ということです。なめらかなメロディラインですが意外と跳躍が激しいので振り回されないように、核となる真ん中の自分、重心を整えた自分で歌いましょう。

8分音符での跳躍が多いため、単語、文章として言葉が伝わるように、前もってブレスの位置をちゃんと決めたり発語の仕方を工夫してみてください。

「楝(おうち)」は「おーち」でOK

あまり聞きなれない「楝(おうち)」ですが、これは「おーち」と歌います。長音「ー」よくいう伸ばし棒として発音の処理します。自然に聞こえますし、歌いやすいです。おうち→おおち→おーち、という考え方です。

「おうou」「えいei」といった母音の処理方法になります。例として王様、扇、綺麗、冷静なども同じ処理です。

風景を映像として想像しよう

5番まである曲なのでただの言葉の羅列にならないよう注意が必要です。まずはあなたがこの曲の風景を映像として目の前に感じる、その場にいる空気を体感するイメージをしましょう。聞いてくれる人、一緒に歌う人と曲の世界観を共有できたらとても素敵な時間を過ごせるのではないでしょうか。

まとめ

昔の日本の歌は耳なじみもよく、幅広い年代で歌うことができる名曲がたくさん歌い継がれています。「夏は来ぬ」はCMなどでも耳にしたり、様々な歌手のカバーや編曲で身近にある曲です。

メロディだけでなく言葉で表現できること、味わえることが歌の素晴らしいところだと思います。

これからも歌曲作品の紹介をしていきますのでどうぞお楽しみに!

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